大天使に聖なる口づけを
「それでどんな人なの? 格好いい? 背は高い?」

まるで友だちと好きな人を言いあっている時のように、もの凄い勢いで母に迫られて、エミリアは逃げ腰になる。
「ど、どんな人って……別に……」

「お城の近衛騎士。真面目で、責任感の強い人。すごく有能で国王陛下からの信頼も厚いらしいよ。見た目もまあ、かっこいいかな……」

勝手に割って入った上に、淡々とランドルフについての私見を述べるクラウデイオに我慢ならず、エミリアはテーブルをバンッと叩いて立ち上がった。
「まあ……じゃなくって、とってもかっこいいです!」

断言された言葉に、母は夢見るようにふわっと笑う。
「エミリア……恋してるのね……!」

(恋!)
大きな声で主張した事が急に恥ずかしくなって、エミリアはぎくしゃくと椅子に座り直した。

「まあ、エミリアにしては良い男を見つけたと思うよ」
アウレディオが食事を続けながら、実に生意気なことを言っている。

「そうね。エミリアは私と違ってとっても移り気だから、本当は心配だったのよ」
母もまた、好き勝手なことを言っている。

(もう勝手にして!)

涙ぐみながら料理に手を伸ばすエミリアに、母は燻製肉を切り分けながら尋ねた。
「それで、その人にちゃんとエミリアのお菓子は食べてもらった?」

 一瞬、エミリアの動きが止まる。

「食べてもらったけど……どうして?」
ふとさっきまでの嫌な気持ちを思い出して、不安になった。
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