大天使に聖なる口づけを
しんと静かな夜の静寂を破るように、カランカランと玄関扉についた鐘が鳴る。

先を争うように階段を駆け下りたエミリアとフィオナは、玄関で母がアウレディオを出迎えている光景を目にした。

薄暗いランプの明かりの下。
心持ち目を伏せたアウレディオの表情からは、結果がどうだったのかはうかがいしれない。

柔らかな髪を揺らして、アウレディオはエミリアへと視線を向けた。
「ちょっと外まで出れるか?」
いつもどおりの口調。
エミリアは胸をぎゅっと締めつけられるような思いがした。
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