大天使に聖なる口づけを
三人は押し黙ったまま肩を並べて歩き、エミリアの家の隣の、アウレディオの邸の庭園へと足を踏み入れた。

一人で住むには広すぎる邸も、この庭も、一人きりになってもアウレディオは決して手放そうとはしない。
手入れをするには時間も手間もかかる薔薇園も、祖父が大事にしていたそのままにしている。

(仕事だって庭造りを選んだのに、休みの日もずっとここにいるんだよね。本当に花や木が大好きなんだから……)

温かな気持ちでそんなことを考えながら歩いていたエミリアは、大きな木の枝に吊るされた、白い二人乗りのブランコに目を止めた。
小さな噴水の前に広がる芝生の上で、風に揺られてキイキイと音を立てている。

「このブランコ、まだあったんだ」
エミリアの呟きに、

「ああ」
アウレディオが頷いた。

「懐かしいわね」
フィオナの囁きに、小さな子供の頃の思い出が甦る。
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