大天使に聖なる口づけを
(今日のお弁当のおかず何にしようかなんて、自分が食べるぶんならまだいいわ……お父さんのぶんだってもちろん喜んで作る。だけど何が悲しくて、お隣さんってだけでついでに作ってあげてるぶんで、悩まないといけないの?)
しかも相手は、このリンデンに住む女の子ならば、知らない者はいないと言われるほどの、超人気者なのである。
――師匠に連れられて、最近は城にも出入りするようになった、庭師見習いのアウレディオ。
『俺って一人暮らしだから、お弁当を作ってくれる人もいないんだよな……』
などと少し憂いを帯びた顔で俯けば、きっと次の日には街の女の子たちからも、王宮で働く侍女たちからも、ものすごい数の弁当が集まるに違いない人物。
遠くからでも目を引く淡い金色の髪。
よく晴れた日の空のような蒼い瞳。
整った綺麗な顔に、すらりとした肢体。
どこか人を寄せつけない神秘的な雰囲気。
それなのに、その問題の人物――アウレディオは、
『あの……もしよかったら……私がお弁当作ってきましょうか?』
と親切に申し出てくれる女の子たちに対して、いつも無表情に、
『俺はエミリアの弁当しか食べない』
と答えてしまうのだ。
そのあまりにつれない口調、さっさと去って行ってしまう冷たい背中に、少女たたちはみな一瞬呆然と立ち尽くす。
そして決まって次の瞬間、行き場のない怒りの矛先をエミリアへと向ける。
アウレディオの余計な一言のせいで、エミリアはこれまでに少なくとも八人の友だちを失くした。
顔も知らないような相手からの嫌がらせも、あとを絶たない。
おかげで『しっかり者』という誉め言葉の上に『図太い』という表現まで付くようになってしまったのだが、エミリアが被っている最大の迷惑は、そんななまやさしいものではなかった。
しかも相手は、このリンデンに住む女の子ならば、知らない者はいないと言われるほどの、超人気者なのである。
――師匠に連れられて、最近は城にも出入りするようになった、庭師見習いのアウレディオ。
『俺って一人暮らしだから、お弁当を作ってくれる人もいないんだよな……』
などと少し憂いを帯びた顔で俯けば、きっと次の日には街の女の子たちからも、王宮で働く侍女たちからも、ものすごい数の弁当が集まるに違いない人物。
遠くからでも目を引く淡い金色の髪。
よく晴れた日の空のような蒼い瞳。
整った綺麗な顔に、すらりとした肢体。
どこか人を寄せつけない神秘的な雰囲気。
それなのに、その問題の人物――アウレディオは、
『あの……もしよかったら……私がお弁当作ってきましょうか?』
と親切に申し出てくれる女の子たちに対して、いつも無表情に、
『俺はエミリアの弁当しか食べない』
と答えてしまうのだ。
そのあまりにつれない口調、さっさと去って行ってしまう冷たい背中に、少女たたちはみな一瞬呆然と立ち尽くす。
そして決まって次の瞬間、行き場のない怒りの矛先をエミリアへと向ける。
アウレディオの余計な一言のせいで、エミリアはこれまでに少なくとも八人の友だちを失くした。
顔も知らないような相手からの嫌がらせも、あとを絶たない。
おかげで『しっかり者』という誉め言葉の上に『図太い』という表現まで付くようになってしまったのだが、エミリアが被っている最大の迷惑は、そんななまやさしいものではなかった。