You are not alone.
「先生はどうして私に構うんですか?」
「ん?」
夕斗はスプーンを動かす手をピタリと止めた。
「お前が学年最下位を英語力を持ち、改善しようとする気を見せない困った奴だから」
「それ! 勉強するしないは私の自由だし、勉強しなくて困るのは私であって先生じゃないでしょう? それなのに先生が私に構うのは変! 贔屓してるって他の生徒から言われたらどうするんです? 先生は迷惑じゃないですか?」
「迷惑だけど……贔屓じゃないしなー」
そんなことを言ってくる奴らがいたら、それはそいつらの勘違いだ。気にする必要はないと夕斗は言った。
友利は納得しなさげだ。
「どうみても贔屓でしょう」
「違うぞ。俺はただ……お前にあったアドバイスをしているだけだ」
――アドバイザーとして。
「私に?」
「ああ。英語もとい日本語以外の語学全般が苦手でネイティヴの先生達と喋る勇気が無い。努力するのは嫌々そうに座学のみ、会話の方は触れようとする気配が全く見えない。そんな人間にあったアドバイスを今まさにしているんだ」
……これのどこがアドバイスか。ただご飯を食べているだけじゃないか。
「学校は好きじゃないだろう」
「え……」
「遠慮しなくていい。学校が好きな奴のほうが珍しいってものだ。俺だって学生の頃、学校が休みの日は嬉しくてたまらなかったし、自由な大学でも授業があると思うと面倒くさくて仕方なかった。……だから、学校を好きになればいい」
学校が好きな人なんて珍しいと言っているくせに、この男は好きになればいいと簡単に言ってのける。なんて矛盾しているのだろう。
「この学校は、それが可能なんだ」
この自信はどこから来るのだろう……。