あの夏に見たあの町で
高山ありす29歳独身
フランス人の父と日本人の母から受け継いだ、色素の薄い栗色のふわふわ猫毛の髪を右手で掻き上げる
色素の薄い髪も肌も緑がかった瞳も昔から嫌いだ
幼い頃はそれ故に、仲間に入れて貰えず寂しく過ごすことも多かった
住み慣れたワンルームのひとり暮らしの部屋で、冷房のスイッチを入れ浴室に入る
7月上旬にもなると朝目覚めると汗だくだ
蛇口を捻り、ぬるめのシャワーを頭からかぶる
夏は嫌いだ
暑いし
蒸すし
彼のことを思い出すし...
3年前の夏の夜
仕事帰りに家までの道のりで事故に巻き込まれ亡くなった彼
赤信号を無視し、猛スピードで突っ込んできた相手方の車はフロント部分は大破したものの、運転手は軽い怪我だけ
運転席側から突っ込まれた彼はほぼ即死だったと聞いた
2ヶ月後に迫った結婚式に心弾ませながら、同棲していたアパートで1人彼の帰りを待っていた私は病院からの1本の電話で奈落の底に突き落とされた
婚約者だった彼、白石新(しらいしあらた)とは社会人になってから同僚から同じ地元の奴知ってると紹介された
狭い田舎ではあるけど、知り合いではなかった
新とはすぐに意気投合して恋人になるのにも時間はかからなかった
新がいるといつだって世界がキラキラと輝いて見えた
辛い時は2人寄り添い
そしてまた笑い合う
ずっと...そんな日々が続くんだと思っていた