あの夏に見たあの町で


“旅館は初めてですね”



有栖川グループは市街地や都心で観光やビジネスへの利便性を考えられたホテルが主体で、山奥の温泉地での施設は初めて



それもホテルではなく旅館





タブレットで新館のコンセプトやシステム、設計のイメージ図などを見ていく




“せっかくの山奥の温泉地にホテルでは味気ないからな”



専務の言う通り、温泉地にラグジュアリーなホテルを建てたってそんなに需要はないだろうな




純日本旅館のように担当の仲居さんがいて、部屋まで館内の説明をしながら案内してくれて、部屋ではお茶を入れて挨拶をし、夕食も朝食もお世話をしてくれるという様なスタイルではなく


ホテルのようにチェックインの時に館内や食事の説明をして、鍵をお渡ししてご自身で部屋に行ってもらうスタイルだけど、建物の外観も中も和風の造りで、選べる浴衣なんかも用意して、食事も和食懐石といったホテルのような気軽さで旅館の趣きを楽しめる




ただ、なんと言うか『山奥』という利点が活きていない気がする



それに『山奥』であるが故の難点の克服も...









“まだ計画途中ではあるけれど、何か改善点は?”





タブレットを見て無言になっていると、ランチの時と同様に改善点を求められた







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