あの夏に見たあの町で
駆けつけた病院の霊安室で彼に縋り泣いた
どんだけ名前を呼んだって、彼からの返事はない
どんだけ涙を流したって、冷たく動かなくなった彼が濡れた頬を指で拭ってくれることはない
後のことはよく覚えていない
どうやって家に帰ったのかも
どうやって葬儀をしたのかも
どうやって結婚式をキャンセルして、参列予定者に連絡をしたのかも
いつの間にか葬儀も終わって
いつの間にか新がいない日常が始まっていた...
ただ呆然と過ぎていく日々を見送る
新と住んでいた部屋は2人の思い出が詰まりすぎていて、辛いだけだったから会社の近くに引っ越した
ただ毎年くる蒸し暑い夏の夜にあの日のことを思い出し
ひとり過ごすこの部屋で、彼と過ごした輝く日々を思い出す
あの夢を見るようになったのは、新がいなくなってから
程よく冷えた部屋の中で、朝の支度を整えていく
今年ももうすぐ彼の命日だ