あの夏に見たあの町で


専務はクスクスと笑いながら


“この状況でよく仕事の話が出てきたな”


と感心している




“そのためにここへ来たので...”



苦笑して、現在の計画に足りないと思うものを話す



“『山奥』は何もありません。遊ぶ所も大きなショッピングセンターもコンビニも...それがメリットでありデメリットです。落ち着いた時間を過ごしたい大人だけをターゲットにする小規模の旅館なら充分ですが、若者やファミリー層もターゲットにする今回の計画では何も無さすぎて惹かれません。”



腰は抜けたままなので、専務に抱きかかえられ続けている間抜けな状況はなんとかしたいのに...どうにも力が入らない



“夏は川のアクティビティ、空いている土地に芝生でも敷いて陸のアクティビティができれば春秋も楽しめる...冬には近場のスキー場まで送迎バスを出せば一年を通して集客できるということか”



さすが専務、察しがいい



“芝生エリアでかまくら作るのも楽しそうですね”




いくつも並ぶかまくらを想像してちょっと楽しくなった



“で、お前はいつになったら自力で立てるんだ?”



笑いを堪えながら見下ろす専務に“当分無理だと思います”と苦笑する






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