あの夏に見たあの町で
少し間を空けて再び専務が話し出した
“6歳の時、父親が亡くなって大黒柱がいなくなって貧しくもそれなりに楽しく生活してた。ある日、新が風邪を引いて、それに付きっきりになってる母親がいて、暇を持て余した俺は1人で遠くの公園に冒険に出た。遠くって言ってもいつも遊んでた公園から500メートルくらいだけど。ここで1人で遊ぶ小さな女の子を見つけた”
え?この公園?
専務が6歳の時、私は4歳...その頃はちょうど妹が生まれたばかりで、友達もいなかった私は1人で家の裏のこの公園で遊んでいた
4歳だった頃の記憶はほぼ薄れ消えていて、この公園で1人で遊んでいたことしか覚えていない
この公園は小さいし、町の中心からは外れてて、滅多に他の子どもが来ることもなかった
そういえば、あの夢はその頃の記憶の夢...
「さく...ちゃん」
専務の名前は『はじめ』だけど、『さく』とも読める
「思い出した?『あーちゃん』」
微笑む専務に夢の中に出てくる男の子が専務だったのだと知らされる
“新が亡くなってから、夢を見るんです”
思い出したわけではない申し訳なさに顔を逸らし首を振り俯く