あの夏に見たあの町で
〜進む針は戻らない 朔side〜
6歳の時に遠くの公園で見つけた小さな女の子
ふわふわの髪は栗色で、夏の光に透き通るような白い肌とエメラルドの瞳はお人形さんのようで、寂しさを隠して1人ひたすらに遊具で遊ぶ姿に一瞬で恋に落ちた
三日間、声すらもかけられず、公園の入口の陰から見てるだけだった
なのに、家で寝込んでいた片割れに毎日報告した
元気になったら一緒に行こうって約束もした
女の子は毎日、小さな公園でひとりで遊んでいた
ブランコに乗ってる日もあれば、地面に木の枝で絵を描いてる日も会った
公園のすぐ下の家に住んでるらしく、いつもそこから「あーちゃん」と呼ばれて帰っていった
四日目にやっと女の子に声をかけた
「ねぇ、いつもひとりなの?」
今思うと、随分と無神経な言葉をかけた
でも、女の子はそんなことは気にせずに、他の子どもがいることが嬉しいと伝わってくる笑顔を見せる
「うん、エマちゃんが生まれてからお母さん忙しいの。あーちゃんはお姉ちゃんだから...」
自分のことを『あーちゃん』と呼ぶ女の子は最初の笑顔からだんだんと寂しそうな顔になっていった