あの夏に見たあの町で


でもやっぱりガキの力では無理があった



あと少しの所で足を踏み外すと、その勢いで落ちてしまった



地面に叩きつけられた強い衝撃と右腕に激痛を感じた



痛みに歯を食いしばる




起き上がったあーちゃんを見てホッとした



大きな怪我はなさそうだ



「ごめんあーちゃん、踏み外しちゃった」



謝ると、俺を見たあーちゃんの表情が一変した



「さくちゃん血!」



血?あぁ、だからこんなに痛いのか




俺の血を見て泣き出してしまったあーちゃんの声にあーちゃんのお母さんが家から飛び出してきた




すぐに救急車を呼ばれて、あーちゃんのお母さんに付き添われて町で一番大きな総合病院に運ばれた



母親も病み上がりの新を連れてすぐに駆け付けた



処置を受けたものの、筋断裂に末梢神経の一部分も損傷していてこんな田舎の病院では満足に治療はできないと医者に言われた





次の日、母親は俺と新の祖父だという男を連れてきた




母親と祖父母は絶縁状態で生まれて初めてじいちゃんという存在に会った




俺の病室で母親とジジイと3人






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