あの夏に見たあの町で
俺が新の死を知ったのはそれから一週間後
ジジイからの電話で目が覚めて、寝惚けた頭に落とされた爆弾で、用件だけ伝えられて電話が切れた後も暫く放心状態だった
新が死んだ?
一週間前は結婚するんだって幸せそうに笑ってたじゃないか
あーちゃんは?
彼女はひとり残されて...また寂しい思いをしてる?
ハッとして、手に持ったままだった電話でリダイヤルする
『どうした?』
すぐに出たジジイ
「あーちゃん...高山ありすは?」
捲し立てるように問う
『高山ありす?ああ、新の婚約者か。今日から出勤しているみたいだが、茫然としているようだ』
淡々とした答えに拳を握りしめる
『彼女なら大丈夫だ。元々仕事が好きな子だ。仕事があるうちは後を追うことはないだろう』
ジジイは一社員のそんなとこまで見てんのかよ...
彼女は大丈夫という言葉とジジイとの経営者としての差に安堵と焦りが混ざり合う
彼女の見張りはジジイに託すとして、俺は目の前の仕事を終わらせなければ...
早く日本に帰りたい
そう強く思うようになった