あの夏に見たあの町で
〜世界の色を変える時 朔side〜
三年近い月日が経った
相変わらず俺と悠貴は飛び回っていた
カナダ内を2箇所回った後にオーストリア、トルコを1箇所ずつ回り、3か月前からグアムにいる
3年前と違うのは、時折彼女のことを思い出すようになったこと
彼女はまだ新のことを想って泣いているのだろうか...それとも新しい恋を見つけて幸せになっているだろうか...と
6月に入り、雨季に突入したグアムでは突然のスコールもまま有る
が
何も出勤時のほんの数分に降らなくても...
事務所内で濡れた髪と服を拭いていると、電話が鳴り、現地のスタッフが出た
話しながらチラリと俺を見て、保留ボタンを押す
“し...社長からです”と緊張の主持ちで差し出してきた受話器を受け取った
「もしもし?」
左手で頭を拭きながら、右手で保留を解除して受話器を耳に当てる
「朔、就任式をする」
突然『就任式』と言われて何のことかわからず、「は?」と漏らす
「戻ってこいと言っている。専務就任式だ。辞令と式の詳細は送ったから確認しろ」
相変わらず用件だけ言って切られた電話を睨む
元気か?くらいないのかよ
つうか辞令って...役員て株主総会とかで決めるもんじゃないのかよ...
まぁ株式の殆どはジジイが持ってるけど...