あの夏に見たあの町で


日本に帰って来られたのは、就任式当日だった




空港から一旦家に帰り、デカいスーツケースを置いて身軽になってから本社に行く





帰国が決まってから買った車は家の車庫にはなくて、ジジイに電話したら本社のビルの地下に置いてあると...



一体何のために買ったんだか...





蒸し暑い中を電車と徒歩で本社に行った




途中、タクシーにすれば良かったと気付いた時には既に駅に着いていて、ホームに入ってきた電車を見て今更かと諦めた





幾度となく通ってきた経路だけど、随分と景色も変わっていた






道中頭に浮かぶことは彼女のことばかり




俺のことは覚えているだろうか...



当時の年齢を考えると覚えている可能性は低いけど、僅かな期待だけが膨らむ




それと同じくらいの不安も過ぎる




婚約者であった新と同じ顔ということが彼女にどう影響を与えるのか...






もう忘れたガキの頃の初恋のことだと思っていたのに





いつの間にかこんなにも彼女のことを考えてしまっている





覚えられていないかもしれないのに...







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