あの夏に見たあの町で
「気に入ったんならやるよ。昨日エメラルドもらったしな」
と昨夜のことを思い出す
大粒の涙を流していた彼女は「あれは返してください」とはっきりと言う
新にでも貰った大切なものなんだろうな...
「俺と結婚したら返してやるよ」
と冗談ぽく言うと「しません!」ときっぱりと即答され、思わず笑ってしまった
からかいやがって...とか思ってるんだろうな
わりかし本気で言ったんだけどなぁ
今すぐじゃなくても
いつか
新じゃなくて俺を好きになって欲しいと思うようになっていた
捲った袖から少し出ていた右腕の傷痕に彼女が気付いた
左手で袖を更に捲って見せる
「俺が生まれて初めて大切なものを守った時にできた傷」
この傷で俺の人生が変わった
でも『あーちゃん』を恨むことなんて有り得なかった
これは俺の誇り
初めて守った大切な人に、時を経てまた巡り会うことができた
神様がいるのなら、もう一度、できれば残りの人生ずっと彼女を守らせてくれとお願いしたい