あの夏に見たあの町で
高速道路のインターを出て、市街地にあるうちの既存のホテルに車を入れた
少しでも長く同じ時間を過ごしたくてありすには『視察』と言ってランチに連れ行く
色々と理由も付けて、手を繋ぎ、あの時みたいに『さく』で呼ばせる
『あーちゃん』はあの時のことを覚えていない
生まれた地が同じで、右腕に大切なものを守った傷痕があって、『さく』とまで呼ばせても気付かないのは記憶にないから...
メニュー表は全て取り上げて、俺の独断で注文を済ませると不服そうにするありす
「コースメニューはどれも同じで金額によって品数が違うから、一番長く君と一緒に食事を楽しめるコースにしたよ、ありす」と、わざとらしく言うと疑わしそうな目を向けられる
言ったことが本音だけど、裏を読んでそうだな
“ここの視察は元々予定していたんですか?”
突然フランス語で質問を投げてきた彼女に感心した
仕事の話もできるってわけね
フランス語でこれまでの仕事の話なんかもして、気付いたことがある
ジジイが言っていた通り、彼女は仕事が好きらしい