あの夏に見たあの町で


車を停めて、新館予定地へ歩き出す





“ここの温泉地は良くも悪くも『山奥』なんです。土地は川のすぐ手前までありましたよね?”




改善点を求められ、そう答えるありすの頭の中にはもう改善後のイメージがあるようで頼もしい




荒れ放題の草を掻き分けて、川を目指して進む






急に現れた崖に“危ねっ”と足を止めると、後方から“あのぉ、専務、川はどんな感じです?”と声が聞こえた




振り返るとすぐ後ろにいたはずのありすが遠い




おーい...ありすちゃーん?




笑いを堪え、抵抗する彼女の手を引いて川が見えるところに立たせる




高さとしてはビルの2階よりちょっと高いかな程度




反応のない隣を見ると、目を固く閉ざしていた




堪えきれず笑いながら目を開けるよう促しても首を振って拒否するありすを掴んでいた手の力を強くする


“ちゃんと手持っててやるから”と言うとそぉっと目を開けた




同時にガクンと力が抜け崩れた体を抱きかかえた




その状態で、“すみません...私には高すぎますが、ちゃんと下りられるように整備すれば川のアクティビティはできそうですね”と言ったありすに腹筋は崩壊寸前だ






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