あの夏に見たあの町で
その透き通る白い肌に触れ、顔を寄せる
唇が触れる寸前で小さく「新...」と聞こえ、手を離し距離を取った
新を呼んだ彼女はまだ眠っている
触れていた手で自分の額を押さえ大きく息を吐く
早く
無条件で彼女に触れても許される権利が欲しい
チラリともう一度隣を見ると、目を覚まし未だ重たい瞼をパチパチと瞬いてる
“降りるぞ”と声をかけ、先に車から降りて両手を組んで伸びをする
目が覚めたら実家の裏の公園にいることが飲み込めないありすが“あの...ここ...”と呟いたので教えてやる
“俺の特別な場所”
公園内の一際大きな木に向かって歩を進める
“どうしてここを?”
混乱しているのか曖昧な質問が来た
どうしてここを知っているのか?
どうしてここを『特別な場所』と呼ぶのか?
どうしてここに立ち寄ったのか?
“やっぱり覚えてねぇか”
わかっていたことだ
自分だけがあの時の思い出に囚われているのだと
“まぁまずは、お前が知りたいであろう結論から言う。新は俺の双子の兄だ”
絶縁状態だから、新からも母親からも俺の存在なんて聞いていなかったんだろう