あの夏に見たあの町で


ビールを一気に中ジョッキ半分くらいまで飲んでニヤリと張本さんは笑う



「え?」という私の反応に



「専務に連れ去られたって報告が上がってるわよ?」



とテーブルに乗り出してきて、思わず身を引いた




「そういえば、専務って新の双子の弟だそうですね」




どうにか逃れられないものかと話を逸らす





「本当、そっくり過ぎて、新くんかと思っちゃった!絶縁状態って言ってたけど、昔は一緒に住んでたのよね?ありすちゃんの地元を知ってるんだもの。それで視察に連れてったんでしょう?」




一瞬、上手く逸れたと思ったのに...戻ってきた




これは...逃れられそうにない




がっくりと項垂れてから、金曜日の視察を掻い摘んで話させてくれるはずもなく、張本さんの鋭いツッコミに事細かに話させられる




ビールからワインへと飲むものを変えて、肴も追加して金曜日の出来事はほぼ吐かされた





「へぇ専務と一緒のお風呂に入ったのね」



張本さんはニヤニヤと笑みを浮かべながら、ワインに合わせて注文したチーズフライをひとつ頬張った




「その言い方は何か語弊が...」





< 93 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop