あの夏に見たあの町で
実家で専務が先にお風呂を使い、後から私が入っただけのこと...
ただ、専務が入った後ということだけでも自分が入る時にあらぬ妄想をしてしまい湯舟で逆上せかけていたなんて言えない
しかもその後で、濡れてしまった服を浴室で乾燥させるために、専務の下着まで干しましたなんて...
絶対に言えない
思い出して、顔が熱くなる
いや、これはきっとお酒のせいだ
「ちょっとお手洗い〜」と言って上機嫌な張本さんが席を立ち、個室の引き戸をガラガラと開ける
ふぅと息を吐いていると、「あ...」と引き戸を開けた体勢のまま張本さんが固まった
どうかしたのかと開いた戸を覗き込むと、金曜日に専務と一緒にいた背の高い整ったお顔の男性がいた
「お疲れ様です」と微笑んだ男性に、「お...おおおおお疲れ様です」と動揺を隠せない張本さんは、それだけ言って逃げるようにお手洗いに向かって行った
残された男性と目が合って、「お疲れ様です」と頭を下げた
私に向かってニッコリと笑顔を見せた後に、店員さんに向かって、「すみません、僕らここでいいです」と言った