幼なじみとナイショの恋。
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スマートフォンから鳴り響く目覚ましの音で、はっと目を開ける。
寝ている間息を止めていたのか、息苦しさと動悸を感じて、布団を剥ぎ、慌てて上半身を起こした。
全力疾走をした後のように強く打ちつける鼓動。
喉がカラカラに乾いている。
「はぁっ、はぁっ……。夢……か……」
どこまでが記憶で、どこまでが夢なのか。
ううん。もうどんな夢だったかも忘れてしまった。
だけど、何だかとても怖い夢だった……。
放心状態の自分を奮い立たせて、とにかく顔を洗おうとベッドから立ち上がる。
部屋のドアノブに手をかけたところでふと違和感を感じた。
いつもはしない、コーヒーの香り。
リビングからの物音。
……お母さんがいる。
今日はまだ平日なのに。
ひょっとして休み……?
出て行くのを躊躇うように、ドアノブにかけた手が固まる。
やだな。自分のお母さんなのに。
ただでさえ普段顔を合わることがあまりないから、こういう日は喜ぶべきなのに。
でも、どうしてもお母さんと鉢合わせることを考えると憂鬱な気持ちになってしまう。
こんな自分、すごく嫌……。
憂鬱な気持ちを押し殺し部屋を出る。
洗面台で顔を洗い、リビングへと向かう。