幼なじみとナイショの恋。
「お、おはよう」
「おはよう」
お母さんは、ダイニングテーブルの椅子に座り、ノートパソコンに向かっていた。
辛うじて挨拶が返ってきたものの、私の方には見向きもしない。
「お、お母さん、今日は休み?」
「そう。悪いけど、今手が離せないから自分でトースト焼いてくれる?コーヒー飲むならポットにお湯が沸いてるわよ」
「……うん。ありがとう」
カタカタとキーボードを打つ音を聞きながらお母さんの横を通りキッチンへ。
ねぇ。お母さん知ってる?
私、コーヒーは苦くて飲めないんだ。
知っているわけないよね。
私のことなんてお母さんは興味がないもんね。
トーストが焼けるまでの間、キッチンでココアを淹れる準備をする。
お湯を注ごうとしたら、お母さんに「ねぇ」と呼びかけられて思わず肩が上がった。
顔を上げれば、キーボードを打つ手を止め、こちらにじっと視線を向けたお母さんと目が合ってドキッとする。
「な、何?」
「この間、担任の先生から電話があったわよ」
「え……?あ」
そうだ。この前の学年レクレーションの帰り道、担任の先生がお母さんに連絡するって言っていたっけ。
「あなた、崖から落ちたって……」
「ち、違う違う!落ちたのは私じゃないの!クラスの女の子を助けるために崖を下りたら、私まで登れなくなっちゃっただけで……」
「は?」