幼なじみとナイショの恋。
「そう……なんだね」
「だから、何だか蒔田さんを見ていたら、つい2人を思い出してしまって!幼なじみっていいですよね!アンガス王子やヴィオラみたいに素敵な恋をしているのかな〜なんて、つい考えちゃいます!」
興奮冷めやらぬといった感じの井田さんとは裏腹に、私の気持ちは静かに沈んでいく。
そうだね。
井田さんの言う通り。
私がヴィオラみたいに、お母さんの反対なんてものともしなければ、そんな素敵な恋もできたかもしれない。
だけど────。
「私とはるくんは、二人のようにはならないよ……」
自分でそう言っておきながら胸が苦しくなって、食べかけのたい焼きを持つ手に力がこもった。
そんな私を古賀さんがじっと見つめている。
「どうして……ですか?私には、蒔田さんは尾上くんのことが好きなように見えます」
悲しそうに眉尻を下げる井田さん。
古賀さんといい、井田さんといい、みんな鋭いなぁ。
そんなに私の気持ちってだだ漏れなのかな?
もしかしたら、もういい加減隠しきれないほど、はるくんへの気持ちが大きくなってしまっているのかもしれない。
「私が、弱いから」
「え?」
「私が弱いから、はるくんとの未来はないの……。私は、はるくんとの未来を望む勇気がない」
「蒔田さん……」