幼なじみとナイショの恋。
はるくんとの未来を望めば、今以上にお母さんを裏切ることになる。
私にはこれ以上、お母さんを裏切る勇気なんてない。
ただでさえ、お母さんの気持ちを裏切って、こうして10年間もはるくんの側にいるんだ。
このことだってもし知られたら、お母さんをすごく傷つけてしまうだろう。
私の気持ちを知ったお母さんが、はるくんやはるくんのお母さんにどう行動を起こすかもわからない。
また、10年前のあの日みたいに、はるくんやはるくんのお母さんを傷つけてしまうかも。
そんなの絶対に耐えられない。
私がはるくんとの未来を望んだところで、誰一人として幸せになんてなれないんだ……。
それなら、こんなちっぽけな私の恋心なんてなかったことにしてしまえばいい。
どんなにはるくんが好きでも、はるくんへの想いでいっぱいになってしまっても、
はるくんとの未来を望まなければいいだけの話。
そうすれば、全てが上手くいく。
はるくんの側にだって、後もう少しくらいはいられるから……。
今のままでいいの。
弱虫な私は、多くを望んで、はるくんの隣にいられる今の幸せを脅かされたくない。
「尾上が望んだら?」
「……え?」
「尾上があんたとの未来を望んだらどうすんの?」
古賀さんは、相変わらず感情の読み取れない表情で私を見つめている。
はるくんが……?
「……そんなこと、ありえないよ」
私は肩を竦め苦笑してみせる。