幼なじみとナイショの恋。
それとも、どこか別の場所で待ってた方がいい?
うーん……。
みんな下校して人がまばらになった教室で、わざとゆっくり帰り支度をしながら、うだうだとそんなことを考えていると。
「結衣」
スクールバッグと部活の荷物を肩にかけたはるくんが私に声をかけてきた。
「はるくん!」
私は慌てて立ち上がる。
「面談の日程、上手いことかぶったね」
「そうなの!はるくんどうしよう!お母さん達が鉢合わせちゃったりしたら……」
べそをかきながらはるくんを見上げると、はるくんの大きな手が“大丈夫”というように私の頭上に落ちてきた。
「結衣のことだから、あれこれ考え過ぎてるんじゃないかとは思ったけど、案の定だね」
ふ、と頬を緩めるはるくんは、私とは対象的に全く動揺した様子はない。
昔からそう。
予測できない事態が起こるとすぐに慌ててしまう私に対して、いつだってはるくんは冷静で。
こんな時なのに何でそんなに落ち着いていられるの?ってもどかしい気持ちになることもあるけど、最終的には“慌てたって何にもならない”っていつも気づかされる。
まさに今日もそれで、目の前で私の頭を撫でながら優しく微笑む彼を見ていたら、さっきまで“どうしよう”ばかりで埋め尽くされていた頭が少しだけ冷静になってきた。