幼なじみとナイショの恋。
そんな2人のやり取りは聞こてくるものの、私の頭の中は再び“どうしよう”という言葉で埋め尽くされていた。
日程の変更以外に何かいい案は……。
……ううん。
そんなのない。
はなからこの案が最善なんだ。
黙り込む私を見て、落ち込んでいると思ったのか先生は「蒔田も希望に添えなくてごめんな」と言って申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「いえ。こちらこそ、無理を言ってすみませんでした……」
私は、ペコッと力なく頭を下げ「失礼しました」と言ってはるくんと数学科準備室を後にした。
誰もいない静かな廊下を、はるくんと二人肩を並べて歩く。
「まぁ、無理なもんは仕方ないよね」
「……うん。そうだね」
「うちの親には変に早く来ないように伝えておくから。結衣は面談が終わったらおばさん連れてすぐ教室を離れて」
「わかった……」
「幸い一コマ分空いてるわけだし、鉢合わせはそうないと思うけど。とにかく、わざわざ悪い方に考えるのはやめよう」
「……そう…だよね……」
考えたって仕方ないのはわかってる。
どうすることもできないのだから仕方ない。
大丈夫。
そう簡単に鉢合わせなんかしやしない。
───そう思うのに……。
自分でもなぜかわからないけど、無性に不安でたまらない。