幼なじみとナイショの恋。
はるくんと出逢って、はるくんとの関係を隠すことに決めてから10年。
こんな事態になんて、一度もなったことがなかったのに……。
今まで、なんだかんだで上手くいっていたんだ。
学校の行事でも何でも、滅多にお母さん達がでくわすことはなかったし、お母さん達に秘密にしている私達の関係もなんとかバレずにここまできた。
それなのに、突然歯車が狂いだしたこの感じ。
何だかまるで神様に、もうこれ以上はるくんの側にはいちゃダメって言われているみたいで……。
「結衣?」
はるくんに呼ばれ、私ははっと我に返る。
それからブンブンと思い切り頭を振った。
ダメダメ!
後ろ向きなことばかり考えちゃダメだ!
むしろ、この10年間、何もなかったことの方が奇跡なんだよ。
「……不安?」
不意にはるくんが私の顔を覗き込み、そう聞いてくる。
“不安でたまらない”そう伝えてしまいそうになったけれど、ぐっと飲み込みそれを堪えた。
唇を噛み締め、その場で俯く。
こんな不安定な気持ちを……自分でもよくわからない不安感を、はるくんにぶつけるわけにはいかないよ……。
すると、はるくんの手が私の頬に伸びてくる。
ビクッと肩を震わせると「結衣」と優しく名前を呼ばれた。