幼なじみとナイショの恋。
「不安なことがあるならちゃんと言って。結衣一人で苦しくならないで」
「……っ」
「なんのために、俺がいるの?」
おずおずと視線を上げれば、はるくんの真剣な眼差しが私を真っ直ぐ見つめていた。
はるくんの両手に包まれた頬が温かい。
その熱が、はるくんはまだここにいるんだと教えてくれる。
「……私、不安で……」
「うん」
「お母さん達が、またもめて……。今度こそ、はるくんと一緒にいられなくなっちゃうかもって……そう思うと、怖くて……」
例え何が起きなくとも、いづれはるくんから離れなきゃならないのに。
どうせいつかこの熱は、誰かのものになってしまうのに。
こんなにも、覚悟ができていなかっただなんて……。
情けなすぎる。
「……結衣は、俺と一緒にいたいと思ってくれてるの?」
────え?
はるくんの真っ直ぐな瞳に射抜かれ、カァッと頬が熱を持つ。
そうか……。
今の私の発言は、
“はるくんと一緒にいたい”
そう言っているのと同じだ。
恥ずかしさと共に、後悔の気持ちがどっと押し寄せてくる。
こんなわがまま、はるくんは困るよね?
私なんか、はるくんのお荷物でしかないのに。
───『私もはるくんと一緒にいたい』
その言葉で、秘密の関係が始まった10年前。