幼なじみとナイショの恋。

もう私に残された選択肢なんて一つしかなかった。



“お母さんに本当のことを伝える”



そして、はるくんと私の秘密の関係は、


今日でお終い。


握りしめた手が震える。


声を出そうにも、唇がわななき上手く言葉が出てこない。


その間も、10年前のあの日と同じお母さんの鋭い視線が、私を咎め続けていた。



はるくん……。



「……私は……お母さんに、10年間ずっと嘘をついてきた……」



はるくん。はるくん。



「お母さんに隠れて……はるくんとたくさん話した。笑ったり、時には喧嘩もした……」



はるくん。はるくん。はるくん……。



「そんなはるくんとの日々が、大切だったの。お母さんを裏切ってでも、はるくんの側にいたいと思った。失いたくなかった……」


「な……にを……ばかなことを……っ」



怒りで歪むお母さんの表情に、一瞬にして背筋が凍る。


あ。と思った瞬間、お母さんの手が勢いよく振り上げられ。



「目を覚ましなさいっ!!!」


「ちょ……っ蒔田さん……!!」



先生が止めるのも虚しくそれは振り下ろされ、バチンッ!という激しい音が辺りに響き渡った。


だけど……。





…………あれ?


今、確かにお母さんに叩かれたはずなのに、全く痛みを感じない。


え?
< 193 / 341 >

この作品をシェア

pagetop