幼なじみとナイショの恋。
じゃあ、さっきの音は……?
ぎゅっと瞑っていた目を恐る恐る開けると、そこには───。
「はる……くん……」
「彼女をそそのかしたのは、俺なんで」
お母さんの平手を受けたのは私ではなく、はるくんだった。
はるくんは、お母さんから庇うように私を自分の背に隠して、打たれた衝撃で背けた顔をそのままにお母さんへと視線を向ける。
「責めるのは、俺だけにしてください」
「……っ」
違う……違う……。
そんなの、違うじゃない。
私は私の意思で、お母さんを裏切った。
はるくんと一緒にいたいから、ずっとずっと秘密にしてきたの。
そそのかした……だなんて、そんなの違う。
はるくんを巻き込んだのは、私の方だ。
はるくんの口の端には血が滲んでいた。
きっとお母さんに叩かれた衝撃で唇が切れたんだ。
何で、はるくんがこんな目に遭わなきゃいけないの?
やっぱり、間違っていたんだ。
私なんかが、はるくんの側にいること自体が間違いだった。
「……っはるくん……血が……」
「悠斗っ!!!」
はるくんに触れようと背中に手を伸ばすと、はるくんのお母さんが慌てた様子で階段を駆け上がってくるのが見えて、触れる寸前でピタリとその手を止める。