幼なじみとナイショの恋。
仕事から帰ってきたばかりで疲れた様子のお母さんに、空気を読まず一方的に話を続ける私。
今の私なら、絶対にそんなことはしないのに……。
『だからね!お母さん、その日は塾を休んで行ってもいーい??』
お母さんの眉がピクリと上がる。
しまった───。
そう思った時には、冷ややかなお母さんの目が、私を蔑むように見下ろしていた。
『何を言っているの?そんなもののために、塾をサボっていいわけがないでしょう』
“口答えなど許さない”そんなお母さんの威圧感に、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
その日の夜は、眠れなくなるほど落ち込んだのを覚えてる。
大好きな友達の誕生日を祝うことすらできないことが、すごくすごく悲しかった。
そして、更にその次の日。
その旨を伝えた時のミサキちゃんのなんとも悲しい表情は、追い打ちをかけるかのように私の心をえぐった。
もう二度と、ミサキちゃんが私を何かに誘うことはないだろうと、私は子供ながらに悟ったんだ。
*
『何やってんの?帰んないの?』
その日の放課後。
私は土砂降りの雨の中、マンションの近くの公園にいた。
はるくんと私の間では、“秘密基地”の名で通っていたトンネル型の遊具の中で、ランドセルを放り、膝を抱えうずくまっていた。