幼なじみとナイショの恋。

仕事から帰ってきたばかりで疲れた様子のお母さんに、空気を読まず一方的に話を続ける私。


今の私なら、絶対にそんなことはしないのに……。



『だからね!お母さん、その日は塾を休んで行ってもいーい??』



お母さんの眉がピクリと上がる。



しまった───。



そう思った時には、冷ややかなお母さんの目が、私を蔑むように見下ろしていた。




『何を言っているの?そんなもののために、塾をサボっていいわけがないでしょう』



“口答えなど許さない”そんなお母さんの威圧感に、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。


その日の夜は、眠れなくなるほど落ち込んだのを覚えてる。


大好きな友達の誕生日を祝うことすらできないことが、すごくすごく悲しかった。


そして、更にその次の日。


その旨を伝えた時のミサキちゃんのなんとも悲しい表情は、追い打ちをかけるかのように私の心をえぐった。


もう二度と、ミサキちゃんが私を何かに誘うことはないだろうと、私は子供ながらに悟ったんだ。










『何やってんの?帰んないの?』



その日の放課後。


私は土砂降りの雨の中、マンションの近くの公園にいた。


はるくんと私の間では、“秘密基地”の名で通っていたトンネル型の遊具の中で、ランドセルを放り、膝を抱えうずくまっていた。
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