幼なじみとナイショの恋。




夏休み中の学校は、普段と違って時間の流れがゆっくりしてるように感じる。


生徒達が少ないせいか、どことなく静かで、風の音や木々の葉の擦れ合う音がいつもより鮮明に聞こえる気がした。


校舎近くを通れば、どこからか吹奏楽部の音色が聞こえ、グラウンド近くを通れば、野球部の掛け声とバットにボールがあたる独特の金属音が聞こえてきた。


そして、蝉の声とじりじりと肌を焼くような太陽。



…………夏だなぁ。



そんなことを思う。


瞼を閉じて大きく深呼吸をすると、頬をなでる風から、夏の匂いがした────。





古賀さんの後をついていくと、体育棟へと続く階段に差し掛かり“まさか”という思いが過ぎってピタリと足を止めた。


そんな私の様子に気づいた古賀さんが、無表情で私を振り返る。



「あの……古賀さん、もしかして、今向かっているのって」


「体育館だけど?」


「なんで……っ」



だって、体育館は今恐らく……。



「あんたさ、尾上に会いたくない?」


「え」


「会ってないんでしょ?夏休みに入ってから」



やっぱり……。


古賀さんは、はるくんが部活をしている体育館へと向かってるんだ。



「会いたくない……わけじゃないけど……」



むしろ、会いたい。


すごくすごく会いたい。

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