幼なじみとナイショの恋。
あの優しいはるくんが、私の元を去っていってしまうくらい、私が彼を傷つけたのは明確だ。
はるくんはもう私の顔なんて見たくもないと思う。
夏休み前、彼と目すら合わなかったことを思うと、胸がキリッと痛んだ。
だけど。
だけど私は、許されるならもう一度、
彼の瞳に映りたい……。
「それにしてもさ、あんたって普段からノーメイク?」
「え?あ、う、うん。そうだけど……」
「元は悪くないんだけど、服が派手な分なんかパッとしないんだよなぁ」
顎に手を置き、まじまじと私の顔を観察している古賀さん。
「せめて色つきリップくらいあれば……」
その言葉を聞いて、ハッ!と今朝のことを思い出す。
そうだ!
確か“あれ”のしまっておく場所に困って、このショルダーバッグの中に入れておいたはず!!
「何やってんの?」
ガサゴソとショルダーバッグの中身を引っ掻き回す私を見て、古賀さんが怪訝な表情を浮かべる。
「あった!!古賀さん、これ!!」
古賀さんの目の前に突き出したのは、今朝茜先生に貰ったリップチーク。
────“もし結衣ちゃんに好きな人ができて、その人に自分を見てもらいたいって思った時にはぜひ使ってみて?”
そう言ってこれをくれた茜先生の言葉がよみがえってきて、私はキュッと唇を結んだ。