幼なじみとナイショの恋。
だったら、これは結衣以外に目を向けるチャンスなんじゃないか?
いつまでも、立ち止まっているわけにはいかない。
俺は結衣を諦めなきゃいけないんだから……。
「はる……?」
不安げに俺を見上げる先輩。
先輩には、失礼かもしれないけど、先輩と付き合えば、何か変わるかもしれない……。
「俺……」
“俺でよければ、よろしくお願いします”
そう言おうと、先輩を真っ直ぐ見つめ返した。
────なのに。
「……っ」
────“はるくん!”
不貞腐れた顔の結衣。
いたずらっ子のように笑う結衣。
怒った顔の結衣。
涙を流す結衣。
笑顔の結衣。
結衣との思い出が次々と溢れてくる。
何でこんな時まで、俺の中は結衣でいっぱいなんだ。
「……っ、すいません……。俺、先輩とは付き合えません」
額に手を当て、今にも消えそうな声でそう言えば、先輩の体がゆっくりと離れていく。
「俺には、結衣のいない未来が想像できません」
解こうとすればするほど、絡まり合う糸のように、忘れようとすればするほど、俺の中は結衣でいっぱいになる。
「結衣以外を好きになる未来が、どうしたって想像できないんです」
いつだって、俺が思い描く未来には結衣がいた。
結衣がいない未来なんて、いらないと思った。