幼なじみとナイショの恋。
私のいる机の側まで、無言で歩み寄って来るお母さん。
そういえば、お母さんとまともに顔を合わせるのは、はるくんとのことを知られてしまった時以来だ。
妙な緊張感を覚えながらそんなことを考えていたら、お母さんが大きな封筒を私に差し出してきた。
「これは……?」
眉をピクリとも動かさないお母さんに見下ろされ、私は恐る恐る封筒を受け取ると、その中身を確認する。
「高校生……海外留学プログラム……?」
そこには、高校生の留学のあれこれについて書かれた資料が入っていた。
留学……?
これって、どういうこと……?
「お母さん、これ……」
「結衣、あなた留学をしなさい」
お母さんの口から放たれた言葉に、一瞬頭の中が真っ白になった。
「今の時代、早くから英語を身につけておいて損はないわ。お母さんの職場に、実際にお嬢さんを留学させている方がいてね。詳しく話を聞かせてもらったの」
「で、でも……そんな急に……」
「あなたの将来の為よ。あなたのように、勉強以外何も取り柄がないような子は、もっと広い世界を見た方がいい」
そんな……。だからって突然留学なんて……。
「どうせ、あなたは昔から内気で友達もいないし、日本に留まりたい理由なんてないでしょ?」
何でそんなふうに決めつけるの……?