幼なじみとナイショの恋。
自分に都合のいい夢を見ているだけ?
それならどうか、夢から覚めないで……。
はるくんとの間に、沈黙が流れる。
はるくんの横顔を覗き見れば、整った輪郭を伝って水滴が滴り落ちた。
トンネルの外の街灯が薄く照らすその横顔が、男の人だというのにも関わらず綺麗だと思った。
そんな私の視線に気づいたはるくんが「ん?」と優しく微笑む。
「あ……ご、ごめんね。はるくんまで巻き込んじゃって」
「結衣が謝ることじゃないでしょ。俺が勝手にほっとけなかったんだから」
はるくんは、濡れた前髪をかきあげながら壁に寄りかかり、今にも頭がぶつかりそうな低い天井を見上げる。
本当だったら嬉しいはずのはるくんの優しい言葉が、今は胸に刺さって苦しい。
ねぇ、はるくん。
……あの人にも、こうやって優しくするの?
そんな私の気持ちとは裏腹に、はるくんはくっと喉を鳴らして笑った。
「何か、結構前にもこんなことあったよね」
「え?」
「前は確か、ほっとけって怒鳴られたけど」
はるくんは、昔私がクラスメイトの誕生日会に参加出来ず、このままでは一人ぼっちになってしまうと、ここで泣いた日のことを言っているのだろう。
「ど、怒鳴ってはないよ!!」
「あれ?覚えてるんだ?」
「覚えて……るよ」