幼なじみとナイショの恋。

どんなに辛いことがあったって、はるくんがいてくれる、ただそれだけで、私は幸せだったんだ。


本当に……いいの?


はるくんとの未来を諦めて、本当にいいの?



そう思った時、突然脳裏に古賀さんの声よみがえってきた。



────『まだ、こんなに近くにいるじゃん』



────『あんたの声が届く距離に、まだちゃんとアイツはいる』



────『それを忘れちゃダメだよ。あんた達は、まだどうにでもなる。あんたが望めば、アイツはすぐ駆けつけられる場所にいる。早くそれに気づいてやりな」






今ならまだ…………間に合う?





「……っはるくんっ!!!」




衝動のままに遊具から飛び出すと、私は背を向け立ち去ろうとするはるくんの背中に、しがみつくように飛びついていた。



「結衣……?」



目を大きくして、驚いた様子で振り返るはるくんの瞳に私が映って、途端に涙が込み上げてくる。



────私の声。




「やだ……。行っちゃやだっ……」




どうか、届いて───。




「誰かのものにならないで。私の側にいてっ……」




はるくんのシャツを掴む手に、ギュッと力を込める。


雨で湿った地面に大粒の涙がいくつも落ちていった。



「本当は、ずっとずっとはるくんの隣にいたいっ……。はるくんがいなくちゃいや!」



ずっと、伝えたかった言葉。



はるくんに、大切な人がいるかもしれないということはわかってる。


だけど、もうこれ以上後悔はしたくないの。
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