幼なじみとナイショの恋。
ごめんね。はるくん。
どうか、この想いだけは伝えさせて。
キミに出逢ったあの日から、今も膨らみ続けてるこの想い。
「はるくんが……好き。大好きなのっ……」
雨が止み、ふたたび夏の虫が音色を奏で始める。
「……ごめん」
少しの沈黙の後、旋毛の先からそんな言葉が落ちてきて、目を瞑り、唇を噛み締めた。
覚悟はしていた、と心の中で受け入れる。
だけど、その刹那。
「……もう、限界だわ」
切ない表情で紡がれたその言葉が先か、頬に手を添えられ、上向かされたのが先か。
次の瞬間、落ちてきたはるくんの唇に、目を閉じる間もなく固まった。
「……っ」
唇に触れる、柔らかくて温かい感触。
何で……?
何で私、はるくんとキスしてるの……?
まるで、時間が止まっているかのような長いキスの後、小さな吐息と一緒に、はるくんの唇が名残り惜しそうに離れていった。
真っ赤な顔で固まったまま、はるくんを凝視する。
そんな私を見て、はるくんは申し訳なさそうに笑うと、私を自分の腕の中にスッポリと包み込んだ。
「あーあ。10年間、必死で我慢してきたのに」
「なん……で……」
「でも、今のは結衣も反省して。あんな顔であんなこと言われて理性保てるほど、俺はできた人間じゃないよ」
そう言うと、私を拘束していたはるくんの腕の力が緩む。
まだ混乱している頭の中、そっと体を離してはるくんを見上げれば、そこには優しく微笑むはるくんの姿があった。