幼なじみとナイショの恋。
今住むマンションに引っ越して来たての頃は、マンションから出てすぐの公園が俺の遊び場だった。
その公園は、広いしたくさんの遊具がある、なかなか立派な公園だ。
けれども、近年リニューアルされた近くの大きな区民公園に人が取られ、平日は野良猫が日向ぼっこをしているくらい静かで。
だけど、俺はそんなところが結構気に入っていたんだ。
小さい時から、あまり人がゴチャゴチャしているような場所は好きじゃなかったし。
それに、公園を囲うようにして咲く満開の桜はいつもいい香りがして、青空に映える桃色も子供心に絶景だと思った。
その日も家の中にいることに飽きた俺は、母親に『行ってきます』とだけ言って家を出た。
まだ、小学校に上がる前だったけど、マンションから公園までの道のりに車が通るような道はなく、距離も近いこともあって母親も安心して送り出してくれた。
マンションのエントランスを出ると、桜の花びらがどこからか風に乗ってやってくる。
その元を辿るように駆けていけば、ほんの数分で公園へと辿り着いた。
いつもなら、躊躇することなく敷地内に飛び込んでいくところだが、その日は反射的に入口付近で足を止めた。
公園の入口にある桜の木の下に人の気配を感じたからだ。