幼なじみとナイショの恋。

普段あまり愚痴を言わない人だから、こういう時は大体何があったか予想がついてしまう。



「あれ？悠斗、もう学校に行く時間？」


「もうも何も、結構遅刻ギリギリだけど」


「堂々と言うな堂々と。本当にあんたは毎日毎日……」



あ。訂正。


そう言えば、俺の愚痴はしょっちゅう言ってるな。



これ以上小言を言われてもかなわないから「行ってきます」と言って、そそくさと家を出ようとしたら「あ！待った！」と引き止められてしまう。



「何？」


「下の道に、まだ“あの人”がいるかもしれない。さっき、ごみ捨ての時会っちゃって……。相変わらず、挨拶もせず睨んでくるだけだったけど……」



母さんが言う“あの人”とは、恐らく結衣の母親のことだろう。


結衣の母親と俺の母親は、以前から面識があったらしい。


元々どんな関係で、どうしてこうも仲が悪いのかはさっぱりわからない。


小さい頃は聞いてみようと思ったこともあったけど、結衣が自分の母親に聞けずにいるようだったからやめた。


どんな内容かは知らないけど、結衣が知らないのに、俺だけが知っているような状況にはなりたくなかったから。



「別に、下で会っても適当に挨拶しとくから」


「あー……うん。そっか。そういう点は、お母さんより悠斗のが賢いよね」