幼なじみとナイショの恋。

この気持ちを消せと言うのなら、そっちのがよっぽど“辛い思い”だろ?



「……まぁ、大丈夫だから」



そんな風に曖昧な返事をすると「行ってきます」と言って今度こそ俺は玄関を出ていく。


母さんがまだ何か言いたそうにしていたけど、気づかないふりをして。
















「───で、あの時の古賀さんがめっちゃくちゃ可愛くてさ!!」



その日の昼休み。


俺は翔吾と一緒に中庭に来ていた。


売店で買った惣菜パンを頬張りながら、スマホゲームをする俺の前で、なにやら興奮気味な翔吾。



「あのいつも強気な古賀さんが、雨に濡れてプルプル震えててさ!小さい声で“来てくれてありがとう”ってお礼言ったんだぜ!?もう、俺の庇護欲に完全火がついたよね!!やべぇ、やべぇよ!もうこれ完全に恋ですから!!」


「……」



この話を聞かされるのは、今朝からかれこれ何回目になるんだか。


いい加減鬱陶しくて、もう相槌さえ打つ気も起きない。




翔吾は学年レクレーションの日、とうとう古賀に恋に落ちたらしい。


元々タイプだとは言っていたけど、ちょっと頼りにされたくらいでバカみたいに舞い上がって。


知ってはいたけど、こんなに簡単なやつだったとは……。呆れるを通り越して哀れだわ。
< 96 / 341 >

この作品をシェア

pagetop