疫病神だって幸せになりたい。
出会いとは唐突に。
「なにやってるんだ!お前は!明日使う資料を!」
ここで散々起こられてるのが私、佐藤志歩、今年で28歳。ここ通販会社のOLをしている。残業終わりなんだか、疲れていたあの女の子にコーヒーを出そうとした。しかし、机の角に引っ掛かって転倒。そしてそのまま…
「まったく、資料をコーヒーまみれにするなんて、こっちの身にもなれっつの!」

「す、すみません。」
資料にコーヒーをぶっかけてしまった。

「お前が、これ、全て、印刷しなさい!今日中にだ!」
「はい…。」
別に悪いことをした訳じゃない。今日は運が悪かっただけだ。と毎日お経のように唱えている。

「あ、よければ、一緒に印刷しましょうか?」
「あ、いや、いいです。」
「そうですか。」
「そうですよね…。」
「…はぁ。」
いつもこうだ。誰かの役に立とうとすると失敗してしまう。そして、悲劇のヒロインになるのは相手の方で私は邪険にされておしまい。シンデレラで言うところのお姉さん達。
前までは皆手伝ってくれてたんだけど、嫌気がさしたのか、最近では全然、ましてや避けられてる気もしている。

「あ、佐藤さんまたやったよ。」
「ほんとだ。ていうか、あれってさわざとやってるのかな?」
「さぁ?でも、あんまり近づきたくないよね。」
「うんうん、私にコーヒーこぼされたらやだぁ。」
別に、なに言ってもらっても慣れたからいいけどさ、さすがに本人に聞こえる範囲で言うのやめてもらえないかなぁ。

そしてしばらくポーっと印刷機の前で印刷をし終わるのを待っていたら
「えぇ、本日から入った新人を紹介する。」
と上のお偉いさんから新人の紹介が始まった。
今の時期に新入社員は珍しい。と思ったが気にするまでもなかった。

「本日から企画部に所属します、佐々木誠です。よろしくお願いいたします。」

きっと、あの子もお偉いさんなのだろう。それにしてもすごいイケメン…。ありゃ、若いだろうなぁ。20、3?4?くらいかな。あのくらいイケメンでお偉いさんの子と結婚したいなぁ。なんちゃって。
「…あの子は物語の主人公みたいな綺麗な女の子と結婚するんだろうなぁ…。」
そうひっそり呟いた。別に妬んではないけど羨ましくは思う。

なんてひねくれたことを言っていたら、ちょうどよく印刷が終わった。印刷は相当な量だったので箱にいれて持とうとしたが、その箱が、
「持ち上がらない…。」
なんで、こんなにも重いのか。まぁ、私が悪いんだけどさぁ…。
当然、誰かに頼む術もなくアタフタしていたとき
「あの、手伝いましょうか。」
と、さっきのイケメンが目の前に。

「あ、ありがとうございます。」
すると、イケメンは軽々持ち上げて
「これ、どこですか。」
と聞いてきた。

「あ、あの子のところ。」
「え、パシられてるの?」
「え、いや、私のミスで…。」
「そっか。」

そっけない会話をしたあとにしばらく歩いて、彼はあの子の元へこの膨大な資料をおき
「お昼、後で。」
と、耳元で呟き仕事に戻っていった。

久々にいい人に会った。ボンボンだろう。絶対。誘い方までが紳士的とは…。よく、現実にいたものだ。
「佐藤さんズルくない?自分のミスなのに。」
「ほんと、それ。」
にしても、果てしなく邪険にされるな、私。自分、ドンマイ。
さぁ、これを乗り越えればあのイケメンとご飯だ。お昼まであと一時間。
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