みんとキャンディ
「雄楽が高月先輩にかまうのは、皇くんに負けたくないだけでしょっ」



踵を返した雄楽の腕を掴み、



瑞香は人の出払った部室へと雄楽を連れ込んだ。



部室に入るなり、



険しい表情の瑞香が吐き捨てたセリフに、



雄楽は苛立ちを露わにして、瑞香を睨みつけた。



「高月先輩が皇くんを好きだから、雄楽は意地になってるだけだよっ!」



「知った口きくなよっ。俺は聖梨が兄貴に惚れてようが聖梨が好きだ」



正直、



瑞香の言う、意地が無いと言えば嘘になる。



皇楽に惚れた聖梨を、



自分の方に振り向かせたい。



でも、



それ以上に、



「アイツは女であることに自信が無い。だから俺が……聖梨を好きで居れば、聖梨は少しでも自信を……」



持てるのではないか……。



本当は女の子らしい聖梨を知る自分が、



傍に居ることで、




聖梨の心を守れるのではないか……。




雄楽はそう信じて疑わなかった。




真っ直ぐに瑞香をとらえた雄楽の視線、



紡がれた聖梨への想いに、




瑞香は悔しげに下唇を噛み締めた。
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