みんとキャンディ
謹慎中で部活に出られない雄楽が、足早に廊下を歩いていた時だった。



「あっ……」



放課後のこのタイミングを見計らって雄楽の前に現れた優季に、



雄楽は小さく一礼をした。



「今いい?」



軽く微笑んだ優季がこう言って、険しい表情をした雄楽を廊下の端へと促した。




「チームメイト殴ったんだってね」



わざとらしく尋ねてくる優季に、雄楽は気まずげに視線を床に下ろした。



「聖梨をバカにした相手だったんでしょ? だったら殴ってヨシね」



こう言って涼しげな笑みを浮かべる優季を、



怪訝そうに窺う雄楽。



「でも。それがホントに聖梨を守ることに繋がってるかは別」



ここで優季の顔が、ピリッとした険しい表情へと変わっていく。



「昨日はマネージャー。今日はキャプテンが聖梨に、キミに会わないでって頼みに来たの」




何となく言われることは予感していた。



最近、顔を合わせる聖梨の表情はどこか沈んでいる。



無理に笑う聖梨に不安を覚えつつも、



必死に掴んでいたい聖梨の手が、握り返してくれる間は聖梨の手を雄楽は離せない。


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