みんとキャンディ
雄楽の表情がますます険しくなっていく。



「だったら……サッカー部辞めますよ。俺」



真剣な顔と低い声で発した雄楽の言葉は、優季の神経を逆撫でさせる。



「キミがそんなことしたら、聖梨が傷つくだけってなんでわからないのっ?」



口調を荒げる優季を、雄楽はただ黙って見つめるだけ。



それが余計に苛立ちになり、



「キミは聖梨のこと、全然考えてないっ」



優季の口を動かしていく。



「キミは聖梨を守って満足かもしれないけど……しわ寄せが聖梨にいってるっていう現実も知っておくべきよ」




こう言い放ち、立ち去って行く優季に、雄楽は返す言葉なんて持ち合わせていない。




自分が聖梨を想うことで、聖梨が傷ついている現実。




何時までもそこから目を逸らし、聖梨を自分の手の中に入れておきたかった。




やっと掴んだ手を、離してしまうのが怖い。




しかし、雄楽は正面から向き合わなければいけない。



優季の言葉を頭の中に深く沈めた雄楽は今、



聖梨の顔が見たくて仕方なかった。
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