イジワル専務の極上な愛し方
「話したいことですか?」

そうか、だから家まで送ってくれるんだ。専務の意図が分かり、心がスッとする。

「そう、話したいこと。だから、家まで送らせてくれる?」

「はい! そういうことでしたら、ご好意に甘えさせていただきます」

自宅の場所を告げると、専務は小さく微笑み車を走らせ始めた。

混雑する時間を外れたからか、思ったより車は快適に走っている。明るくネオンで照らされた大きな橋を渡るところで、私は専務に尋ねた。

「専務、お話ってなんですか? あ、新しい取引先のことですか? そういえば、まだ会社名とか伺っていませんでしたよね?」

仕事の話だと思うと、いつもの”秘書モード”になる。そのほうが、専務とは話しやすいから、仕事の内容でよかった。

プライベートだと思うと、どうしても緊張してしまうもの……。

「田辺さんは、せっかちだな。その話は、また明日な。それより、田辺さんって休日はなにしてる?」

「え? 休日ですか? ショッピングとか、家の掃除とかが多いです。たまに、友達と会ったりしますけど……」

あれ? 考えていたことと違った? てっきり、新しい取引先との話かと思ったのに。

それに、休日の過ごし方を聞かれるなんて、これも仕事と関係あることなのかな?

いろいろ疑問が頭に浮かびながら答えると、専務は車を徐々に減速させ、そして橋の中央付近で停車した。
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