イジワル専務の極上な愛し方
「ふ……」

車内でキスだなんて、なんて大胆なの……。専務との初めてのキスが、息もできないほど熱いもので、恥ずかしさとときめきとで心が乱れる。

何度かキスを交わしたところで、専務が唇を離した。

「彩奈って、呼んでいい?」

少しでも動けば、また唇が触れそうな距離で、専務は優しくそう言う。こうやって改めて聞いていると、専務の声って低くて色っぽい……。

「はい……」

「じゃあ、俺のことは翔太って呼んで。今夜から、俺たちは恋人同士だから」

そう言った専務は、ギュッと私を抱きしめる。ふわっと香る甘い匂いは、彼のコロンの香りだ。

まるで包み込まれているようで、頭がクラクラしてきた。

「なんだか、不思議な感じです。それに、車でこんなことをしてると、人に見られちゃいますよ」

どこか夢心地な気分と、恥ずかしさいっぱいで彼の体をそっと離す。

「大丈夫、窓にスモークかかってるから。でも、遅くなっちゃいけないな。帰ろうか」

「はい。本当に、送ってもらっていいんですか?」

今なら、まだ駅が近いから電車で帰れる。そう思って聞いてみると、彼は微笑んだ。

「送りたいんだ。もう少し、一緒にいたい。いいだろう?」

「はい……。お言葉に、甘えさせていただきます」

会社でも、ずっと一緒なのに……。それでも、まだ足りないと思ってもらえることは、素直に嬉しかった。
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