イジワル専務の極上な愛し方
「え……?」

緊張でいっぱいの私を、専務は満足そうに見ている。そして、立ち上がると腕を引っ張り、私を引き寄せた。

「彩奈が、ちょっと物足りなさそうだったから。もっと、最初から強引にすればよかった?」

「そ、そんな。物足りないだなんて……」

まるで、私が甘いことを期待しているみたいに聞こえる。さすがに恥ずかしくて、専務をおずおず見上げるだけだった。

すると、クスッと笑った彼が、顔を近づけてきた。唇が触れそうなくらいの至近距離で、ドキドキが加速する。

「さっきも、なにか話しかけてほしそうな顔をしてたじゃないか。違う?」

「そ、それは……」

そんなに、顔に出ていたなんて恥ずかしすぎる。 ”違う”と否定できないでいると、専務は優しい眼差しを向けてくれた。

「ちょっとだけ、お前の反応を見たかったんだ。もしかして、昨日のことを後悔しているんじゃないかって不安でね」

「そんなことはないです……。専務でも、不安になられるんですか? とても、余裕があるように見えるのに……」

腰に手を回され、さらにときめきが加速する。なんだか、ボーっとしてきそう。

「まさか。彩奈のことに、余裕なんてあるはずないだろ? それに、さっきから専務専務って。名前で呼べって言ったのに、できてないじゃないか」

「え? でも、ここは会社ですから……」

ぐいぐい押されてくる感じが、なぜだか全然イヤじゃない。むしろ、胸が高鳴る自分がいる……。

「会社でも、二人きりのときなら問題ないだろう? ここは、俺と彩奈しかいないんだ」

「で、でも……」

あまりの照れくささに言葉が続かないでいると、唇を塞がれた。

「せ、専務……」

朝から専務室で濃厚なキスをされて、なにも考えられなくなりそう……。でも、業務中なんだから、これ以上はダメ……。

そう思い、なんとか彼の体を押し返そうとするも、それはいとも簡単に阻まれてしまった。

「専務じゃない、”翔太”」

ほんの少しだけ唇を離した彼は、そう言ってまたキスを続ける。

「ん……。しょ、翔太さん。離してください」

とても恥ずかしいのに、胸は痛いほどにときめく。そんな混乱する気持ちを自覚しながら、彼の体を再び押し返すと、ようやく離してくれた。

濡れた私の唇を、翔太さんは優しくなぞっている。

「よくできました。じゃあ、仕事に戻ろうか?」

「え? は、はい」

まだ私の頭はボーッとするのに、翔太さんは涼しい顔をしてデスクへ戻り仕事を始めた。

恋人同士になって初日から、彼に振り回されているみたい。

だけど、それがますます、私の心をときめかせていた……。
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