イジワル専務の極上な愛し方
「私だから……ですか?」

気持ちを、顔に出しちゃダメ。そう自分に言い聞かせても、胸の高鳴りを抑えることはできなかった。

「そう。彩奈だから。他の女性に、優しさなんか見せないよ。耳心地のいいセリフくらいなら、口にするけどね」

「もう、翔太さんったら」

「それくらい、今まで本気で好きになれる人に、出会えなかったってことだよ。今夜、もう帰れるなら、一緒に帰ろうか?」

翔太さんにそう言われ、思わず首を横に振った。

「それはできません。送ってもらうわけには、いきませんから」

彼の帰宅途中に自宅があるならまだしも、私の家はここから遠い。仕事疲れもある翔太さんに、負担がかかることをさせられるわけがなかった。

「困ったな。それだと、平日は全然一緒にいられないだろう?」

ため息をつく翔太さんに、私は笑みを向けながら答える。

「仕事では、ずっと一緒じゃないですか」

むしろ、一緒にいない時間のほうが短い気がする。そのつもりで言ったけれど、彼はどこか不満そうな顔をした。

「それはそうだけど、仕事だろう? ゆっくり過ごせる時間じゃない」

「翔太さん……」

そんなに思ってくれるなんて、素直に嬉しくて彼の気持ちに応えたい。だけど、仕事終わりだと遅くなっちゃうしな……。

「お気持ちは、すごく嬉しいです。でも、私の家は遠いですし、翔太さんに負担がかかっちゃいます。やっぱり、一緒には帰れません……」

せめて駅までかな。そう考えていたとき、彼がふと言った。

「じゃあさ、明日俺のマンションに来ないか?」
< 25 / 107 >

この作品をシェア

pagetop